景品表示法をAIDMAモデルから考える

みんな大好き(?)景品表示法。

BtoCの事業をやっている会社だと、各種キャンペーンの相談が法務に入る機会は多いのではないでしょうか。

 

景品類をつけるキャンペーンにおける法務部門の関わり方は、

  • それが一般懸賞なのか総付なのか、それともオープン懸賞なのか、
  • 一般懸賞や総付景品ならいくらが景品類をつけられるのか、
  • 今企画しているキャンペーン内容が上限額に収まるのか、

というレビューが中心になると思います。

 

が、この手のキャンペーンは、マーケティングの一環として行われるものなので、マーケティングの基礎的な知識持っていると、より相談者の立場に立った対応ができます。

 

AIDMAの法則

マーケティングの用語に、AIDMAモデルというものがあります。消費者の購買決定を説明するモデルの一つです。

  • A = Attention(認知)
  • I = Interest(興味)
  • D = Desire(欲求)
  • M = Memory(記憶)
  • A = Action(行動)

要は、消費者は特定の商品/サービスに対していきなり「買う」という意思決定をするのではなく、段階を踏んで「買う」ところまで達する、ということを示しています。

これ自体は古くからあるモデルで、今はAISASモデル(インターネットでの購買活動を表すモデル)とか、リピーター獲得まで取り込んだモデルとか様々あるのですが、なにぶん私は深く語れるほどのマーケティング知識を持っているわけではないので、ここでは割愛します。

 

AIDMAモデルを使ったマーケティングの検証方法として一般的なのが、消費者がどの段階で離脱しているのかを検証して、そのポイントに対する打ち手を考えるというものです。

例えば、

  • 商品が認知はされているけど消費者の記憶に残るところまで行ってないのか、
  • 消費者の記憶には残っているけど最後の「買う」に至っていないのか
  • はたまた、そもそも商品認知自体がされていないのか

という検証をアンケートなどで行い、そのギャップを埋めるための打ち手を考える、ということですね。

 

超概略ですが、この図だと、消費者の記憶と行動の間での離脱率が高いので、打ち手はその点に対して行うべきです。

 

他方、この図だと認知はされているけど興味を持たれていないことになるので、その点に対して打ち手を打つ必要があります。

 

景品類をつけるキャンペーンも、これらの打ち手の一つです。

 

この景品類の目的、なんでしたっけ?

さて、景品表示法の相談を受けていると、景品類の目的があいまいだな、と感じる相談に対応することが結構あります。(もちろんプロのマーケターの方であればそんなことは起こらないのですがが、日本の会社だとキャンペーンを考える方が全員マーケティングに明るいとは限りませんし、実際そうではないと感じます)。

 

例えば、「商品の売れ行きがイマイチなので、豪華なおまけをつけるキャンペーンをやって起死回生をはかりたいです!」みたいなケースです。(もうお察しの通り、「豪華なおまけ」ですから、たいていは総付景品規制の上限額を超えています。)

「購入者の中から抽選で何名かに超豪華なプレゼントを提供したいです!」というケースもよくあります。「超豪華なプレゼント」なので、一般懸賞規制の上限を(以下略)。

 

このようなキャンペーンの目的、究極的には「商品を売りたい」です。でも、AIDMAモデルで考えたときに、どこを埋めるために行うものなのか、意識されているでしょうか。

 

キャンペーン内容と目的が一致していないケースって?

総付景品のキャンペーンを行う主な理由は、基本的には「最後のひと押し」です。

商品認知が十分でない段階で総付景品キャンペーンを行っても、十分な効果が得られない可能性が高いです。上限が低額なので、キャンペーンが出せるインパクトに限界があるからです。商品認知が十分でない状況であれば、オープン懸賞でインパクトのあるキャンペーンを行った方が、効果が出る可能性が高いです。

 

結構前ですが、某缶コーヒーのキャンペーンで「1000万円分のサービスが受けられる機能が入った携帯電話」のプレゼントキャンペーンがありました。もちろんオープン懸賞で行ってたものですが、私に関していえばいまだに覚えているくらいなので、キャンペーンの効果は十分にあったと言えます。

 

逆に、商品認知が十分あるのにオープン懸賞のキャンペーンを打っても、商品の購入にはつながりません。これ、法務担当としては、オープン懸賞だからOKですで流してしまうケースですが、目的が怪しいなと思ったら踏み込んだアドバイスをしてあげられるとベターです。

 

目的と打ち手がそもそもずれているキャンペーンに対して、「できる方法」をいくら考えても、それは高確率で時間のムダですし、キャンペーンに要するコストのムダです。企画自体の再考をすべきですし、法務としてもそういうアドバイスができるようになるべきでしょう。

 

まとめ

法務の役割には、ビジネスの推進も含まれます。法規制の知識だけでなく、周辺分野についても少しの知識を持てば、仕事の幅も広がります。何より、仕事をしていてそのほうが面白いですよね。