コロナ禍で法務マンが転職するということ

今回の記事は、初めて参加させていただいた#裏legalACの記事です。ちざたまごさんからのバトンです。

初の参加ということでテーマ悩んだのですが、今年自分が書くとしたらこれしかなかろうと。私、今年末に転職してます。法務職がコロナ化で新しい組織にジョインしてみた結果、所感を書くことにしました!

 

法務が転職するということ

 

法務というのは、日々正解のない仕事に取り組む仕事です。その際に拠り所になるのは、法律に関するナレッジだけではありません。その組織で重ねた経験というのが、大きくモノをいいます。

私たち法務は、「組織を問わず使えるナレッジ」と、「組織内での経験で積み重ねた何か」を武器として日々業務を行っているわけですが、転職により後者は失われます。

この「組織内での経験で積み重ねた何か」をさらに分類すると二通りあり、①「組織に対する暗黙知の積み重ね」②「組織における信頼残高の積み重ね」であると考えてます(というか、転職前後のタイミングで改めて言語化してみて実感するに至りました)。

①「組織に対する暗黙知の積み重ね」とは、組織における空気感・人間関係・キーマン・ルール・コンテクスト・仕事の進め方などの理解がこれにあたります。一つの組織である程度年数を重ねると、認識していなくてもこれらはついてきますが、新しい組織では一つ一つ確認また確認の繰り返しでその度手を止めなければなりません。もう、毎度毎度「左右を確認して手を挙げて横断歩道を渡ってる」ような状態になります。

②「組織における信頼残高の積み重ね」は読んでそのまま、貢献を続けることでの信頼感です。これも重要で、これがあるから一定程度自分の中での検討や対外的な説明を端折ることができ、自分のリソースの選択と集中をしやすくなります。

転職をすると、これらは一旦ゼロからのスタートになります。従って、どれだけ法的知識があっても、業務における判断の大胆さ、スピード感というのは大きく、本当に大きく失われます。もう当たり前のことなんですが、なぜそうなるかをちゃんと言語化して理解するまでは結構凹みました。あれ、俺こんなに仕事できない人だったっけ、みたいな。

 

あと、地味に苦しいのが組織によって業務ツールが全然違っていることね。バックオフィスだからこそ、長時間触ることになるツールって大事。メールからチャットからストレージから全部変わってしまい、ツールの設定や慣れる作業で日々の時間が取られていくのは結構キツかった。前述の点と合わせて、最初は自己嫌悪が凄かったです。

 

コロナ渦で転職すると言うこと

 

会社にもよりますが、今の世の中多くの企業がリモートワークに舵を切っています。私の転職先も大半の人がリモートワーク中のため、自分の部署、他の部署ともオフィスに人がいません。もちろん時期的に歓送迎会の実施も難しい。

この状況だと、平時に比べ、組織に対する暗黙知は得づらくなります。パッと隣の席の人に聞けばよかったことを聞くためのアクション(メール打ったり、チャット打ったり)が増え、組織のコンテクストや空気感も把握しづらいです。暗黙知って座学やマニュアルだけで学ぶものではなく、オフィスで周囲から聞こえてくる立ち話に聞き耳立てたり、食事や飲み会のフランクなコミュニケーションで培っていく部分も大きいんですが、それがない(もしくは大きく減る)というのが苦しいポイント。

暗黙知が得づらいと、信頼残高の獲得スピードにも影響します。

今ではイケてない文脈で語られることが多い「シマごとに固まった座席」、「喫煙室での雑談」、「飲みニュケーション」、人が組織に馴染むという意味では、あれはあれで一定の価値はあったんだなーと遠い目で考えてしまいますね。

 

法務がコロナ渦で転職するということ

 

まとめると、コロナ化での法務の転職は、暗黙知や信頼残高が重要な職種が、それを得づらい環境で転職するということなので、キャッチアップには結構なエネルギーが取られます(解ってたことだったけども)。

ただ、上記で「平時」と書きましたが、これからの時代の働き方がコロナ前に戻るとは全く思えないので、これは今後の転職にずっとついてまわる点だとは思います。もはやこっちがスタンダードになっていく。

また、実はこの辺の大変さというのは、(特に規模の大きな会社だと)転職者だけが感じることでもない模様です。話を聞いてみると、異動後に同じ部署や日々やりとりする部署の方に、「実は直接会ったことって一回もないんだよねー 笑」っていうケースが結構ありました。

 

では、どうしたか(どうするか)

 

こんな状況で転職した私がどうやって課題を克服していったか、、、というのを本当は書きたかったんですが、まだ書けないんですだ。。なんせまだ1ヶ月そこらなので、成功体験として「俺やったぜ」って、偉そうに言える状態になってない。

なので、自分が心掛けている/いたことや気構えを書いていくことにします。

 

とにかくキーマンの把握

兎にも角にも人間関係。リモートワーク下で組織の構造が見えづらいので、まずは部内外のキーマンの把握に努めてました。

常にデスクトップに組織図を常備し、相談メールやWeb会議やチャットのたびに組織図上の配置を確認。メールならCCのアドレスの方々も確認。文面や発言に現れるニュアンス、話の振られ方、回答スピードなどと合わせて読み解くと、それらの人の立ち位置や重要性や得意不得意がだんだん見えてきます。(会議はともかく、「メール文面」からこれらが読み取れるっていうのは、法務という職種の特殊能力と言えるかもしれません。文章でコミュニケーションをとる経験、相対的に他部署より多いですからね)

 

そして関係構築

リモートワーク下ではただでさえコミュニケーションの機会が減ります。新参者は存在をます示すとともに、「コミュニケーションが取りやすい人」と周りに思われないといけません。

文脈を読んだ丁寧な受け答えに加え、私はメールやチャットの文体まで意識してくだけた明るいものに変えるようにしてます。前職ではまず使わなかったような言葉づかいをしてるので、前職の人が見たら「何かキャラ変わってない?」と思われるでしょう(笑)社内のチャットの雑談チャンネルなんかも活用。

どんなに実績があったとしても、リモートワークの環境で、周りから気軽な声がけを躊躇わせるような権威性は邪魔でしかないです(もともと私そんな実績も権威もある人間じゃないんだけど)。

 

社内規定や手続きルール、マニュアル資料は面倒でもちゃんと読む

社内規定やマニュアルの類は、オンボーディングの研修後必ず時間をとって復習をしてます。

こういったものから得られる情報は、明記されているものだけではありません。その粒度や、どれだけ浸透しているかを見ることで、組織の状況も見えてくる。地味だけど、一度ゼロになった「組織に対する暗黙知」を再構築していくための重要なプロセスです。

また、意外と社内に長くいる人ほど(経験で何とかしちゃうので)この手の資料を忘れていたりうろ覚えだったりするので、これらに詳しい人間って重宝がられ話しかけられやすくだろうなと。信頼残高の積み重ねはこういう細かいところがとっかかりと思っています。 

 

入社前予習が超大事

ただでさえ慣れない環境で、実務をこなしながらこういう地味なことを並行してやっていくと時間が足りなくなります。

私の場合、幸い転職前に有給消化ができたので、転職先のビジネス、当面対応するであろう実務、必要な法令等の予習をみっちりやっておいたので何とかななってます。が、もし「入社してから覚えればいいやー」ってこれをサボってたらと思うと背筋が寒くなります。

 

まとめ

自分で読み返しても、めちゃくちゃ月並みなこと書いてますね。別にコロナ禍あんま関係ないんじゃないかっていう。

でも、きっとそういうものなんでしょう。コロナ渦だからと言って転職という行為が決定的に変わってしまうわけではなく、転職を劇的に上手くいかせるための魔法の杖なんてものも無く、一般論を地味でも心折れずにやっていくしかないと、今のところそう思ってます。

 

あと法務って、前述の「組織を問わず使えるナレッジ」のウェイトが比較的重い職種であることも確かなんですよね。新たな環境にジョインし、キャッチアップすることに結構なエネルギーが必要なのは事実ながら(そして、コロナ渦、リモート下でその必要エネルギーが多少増えてはいながら)、それでも相対的に「転職しても活躍しやすい」職種であるのは間違いないと思います。

世の中の流れが急激に、かつ読みづらくなっていますが、法務人材の流動性が高くあり続け、選択肢にあふれた世界であって欲しいものです。

 

・・・ああ、何とかアップできたよ!

次のバトンはおもて明さんです。