今年最後の記事になる予定です。
他のブロガーさんがやってていいな、と思ったテーマ。今年読んだ本から特に印象残っている本を挙げて、今年を振り返ってみます。半分以上、自分のための備忘記事だな。
ちなみに、法律書、実務書の類は外してます。
USJを劇的に変えたたった一つの考え方(森岡毅)
マーケティングに対する理解を深めたくて読んだ本。
「マーケティングとは、需要者の頭の中に選ばれる理由を作ること」など、シンプルで理解しやすい言葉でマーケティングが説明されており、マーケティングの概要をつかみたい人にとてもオススメ。
そしてそれ以上に、「戦略とは、何を捨てるかである」という戦略論が、これまで読んだどんな戦略本よりも腹落ちした。
ちなみに同時期に「PIXER」も読んでいたのだけど、USJのアプローチが「売れるものを作る」であったのに対し、ピクサー社のアプローチは「作りたいものを作る」。この対比がとても面白い。一般的には前者が正解で再現性も高いのだとは思いつつ、世の中をひっくり返すのはいつだって後者の人たちなんですよね。
ざっくりわかるファイナンス
マーケティングに続き、ファイナンスの基礎を理解したくて手に取った本。これがKindle unlimitedに落ちてるとか、神すぎる。
経営者の使命は企業価値を最大化することで、そのためにはWACC(加重平均資本コスト)を下げつつWACC以上のROICを上げる必要がある、
ではWACCを下げるためには何をする必要があるか、その観点で内部統制機能の一部である法務が果たすべき役割は? ここからつなげて内部統制に興味が出てきて「経営の技法」や「世界一わかりやすいリスクマネジメント集中講座」などの本に手を出していった。
ファイナンス起点で、自分の企業人としての視野をだいぶ広げてくれたと言える本。この本と上述のUSJマーケティング本を参考に、今年ブランドマネジメントに関する記事を1本書いたっけな。
危うく一生懸命生きるとこだった(ハ・ワン)
「生きづらい時代になってるよね、もっと気楽に行こうよ」という、メッセージとしては手アカがついた内容。だけど、日常の出来事やそれに伴う心の動きの描写など、エッセイとしての解像度がとても高く、ユーモラスで思わず肯いてしまう描写にあふれている。
そもそも、やる気がなくたってかまわないだろう。やる気がなくても十分働ける。好きでやる仕事もある一方、ほとんどはお金を稼ぐためにある。労働の対価としてお金を受け取っているのだ。
それなのにやる気まで要求されるなんて、会社はちょっと欲しがりすぎじゃないか。湧き出しもしないやる気を無理に作り出すこと自体がストレスだ。
ハ・ワン「危うく一生懸命生きるところだった」
これとか、控えめに言って最高じゃないすか?
この手の本は抽象的でフワフワして説得力に欠けるものばかりだったけど、これは違う。疲れた心をスッと癒してくれる、休暇のタイミングで毎回読み直したい本。
ちなみに著者は韓国人のイラストレーター。現代がストレスフルなのは、どこの国も同じなんですね。
交渉力(橋下徹)
交渉術に関する本は「ハーバード流交渉術」や「武器としての交渉思考」など何冊か読んだのだけど、一番しっくりきたのがこの本。
交渉は①譲歩する②脅す③お願いするの3種類しかなく、「譲歩と要求のマトリクス作り」と「そのための内部の利害調整」が交渉のエッセンスのほぼ全てという橋下さんの主張は、BATNAやZOPAを定義する科学的なアプローチとは正反対に感じるものだが説得力があった。
実際、何が双方のBATNAなのかが交渉時点でわかっているケースなんて、国家間交渉のように情報収集にめちゃめちゃ時間とコストかける例ならともかく、我々が日常接している交渉局面ではほとんどないだろうし。
「最後はWinーWinで終わること」も重要。というかこれについては本書含めどんな交渉本にも書かれているので、交渉の最重要ポイントはきっとここなんでしょうね。
最軽量のマネジメント(山田理)
革新的な組織運営で知られるサイボウズ山田理さんの著書。確かマネジメントに悩んでた時期でしたかね、手に取ったのは。
「過去のマネージャーを権威づけていたのは(能力よりむしろ)「情報」で、情報を集約、独占できていればマネジメントは成り立ってしまっていた」
この言及で、年配の方々が役職とエラさを結び付けて考えがちな理由、そしてそれがもう通用しないということがよくわかった。こうやって言語化されると理解が深まる。これじゃあ、年配者の「マネジメント論」は今の若手管理職にはなかなか響かないよな。
マネージャーの負担と心労は、この環境下もあり過去最大級になっていると感じる。マネージャーは「管理」ではなく「場造り」を自分の最大のタスクとして位置付けると共に、役職と権威を切り離すことが必要なんだろうな。
あと、この本出版されたの2019年11月なんだけど、まさかその時は1年後に働き方がこれだけ変わってしまうなんて、誰も想像してなかったでしょうね。
中間管理録トネガワ 10巻
漫画と侮ることなかれ、これは個人的には漫画ではなくビジネス書といって良い。上司とは、部下とは、チームとは、働くとは、人生とは。サラリーマンの悲喜交交がこれでもかと詰まった作品は、第10巻で大団円。
原作的にトネガワにはバッドエンドしか待っていないのだけど、ギャグを交えながらも綺麗にまとめた最終2話は、サラリーマンなら涙なしでは読めない。
あと、利根川やその部下たちの奮闘を見てると、カイジたちが糞野郎にしか思えなくなります。鉄骨渡りで利根川が語る「2000万円」の価値のくだり、説得力が数十倍増に見えてきて、利根川という男に対する印象が180度変わってくるのが面白い。
鬼滅の刃 1〜23巻(吾峠 呼世晴)
これも漫画だけど、今年はこれに触れないわけにはいかない。ついに映画も日本の歴代最高興収を塗り替えてしまった。
物語の内容や評価は世の中の様々な記事に譲るけど、個人的には漫画単体での評価は過去の数多の名作と比べものすごく優れているとは思わない。この作品をここまで押し上げたのは、やはりアニメの存在じゃないだろうか。原作に加え、作画、声優、主題歌、全てが化学反応を起こした至高の作品。
コロナ時代の僕ら(パオロ・ジョルダーノ)
今年を象徴する一冊ということで、これも入れておく。
コロナ第一波時のイタリアの状況は記憶に新しいけど、そんな中で、数学的思考を交えながら、淡々と冷静に論理的に状況を考察するエッセイ、、、
と思いながら本文を読み終えると、あと書き部分の記載が強い印象を残す。心の中の不安に潰されそうになりながら、強い心で冷静さを必死で保つ筆者の姿が頭に浮かぶ。
僕は忘れたくない。家族をひとつにまとめる役目において自分が英雄的でもなければ、常にどっしりと構えていることもできず、先見の明もなかったことを。必要に迫られても誰かを元気にするどころか、自分すらろくに励ませなかったことを。
パオロ・ジョルダーノ「コロナ時代の僕ら」
個人的にこの本の価値は、あと書きにあたる「コロナウィルスが過ぎたあとも、僕が忘れたくないこと」に集約される。毎日感染者数だけドンと出して世間を煽るマスコミと、それを見て右へ左へ大騒ぎする一部の人々は、みんな課題図書としてこれ読むべきなんじゃないかな。
幻のアフリカ納豆を追え(高野秀行)
有給消化期間中、「旅行も行けんし、、、」ということで選んだ本。
アフリカの辺境に納豆を探しに行くのみならず、世界各国の納豆菌を集めた納豆菌ワールドカップを開催するなんてこの著者しかできない。「誰も行ったことがないところに行き、誰もやったことのないことをやり、それを面白おかしく書く」というこの人のモットーが炸裂している一冊。
日常を離れて異文化トリップができる。高野本が初めての人は、「謎の独立国家ソマリランド」から入るのが個人的におすすめです。
こんなところかな。来年は読んだ本の感想を都度まとめて、年末サクッと記事化できるようにしておこう(反省)