法的三段論法はビジネスのコミュニケーションには向かない、という話

今回の記事は、主に新人法務マン向けです。

 

いわゆる「法的三段論法」、法務に携わる人であれば馴染み深いこのフレームワークですが、残念ながらビジネスにおけるコミュニケーションには基本的に向きません。

なぜなら、結論が最後に来るという点で、相手に何かを伝える方法としては効率的でないからです。

 

この話、新任の法務マンにすると、低くない確率で驚かれます。ロー卒だったりするとなおさらのようです。

 

なぜ法的三段論法は効率的でないか

コミュニケーションは、非対称

コミュニケーションというものは、いつだって非対称です。相手は、基本的に、あなたが伝えようとすることを、あなたより知りません。

大事なことなのでもう一度。

その内容がどんなに興味深い内容であっても、どんなにエキサイティングな内容であっても、コミュニケーション開始時において、目の前の相手はそれを知らないのです。

 

さらにもう1点、大抵の場合、相手には、あなたが伝えようとすること以外にも、把握しなければならないことや考えなければならないことがたくさんあります。

要はあなたど同じ程度の時間を、あなたが伝えようとするイシューの検討にかけられない

 

こういう状況下で、導入・前提からつらつらと説明していては、相手は(何の話なの??)となります。興味を失うか、早く結論が知りたくてヤキモキするか、どちらかでしょう。

ビジネスの局面で人に何かを伝えるときは、結論から伝えるのが鉄則です。

 

コミュニケーション時の、ひと手間

とはいえ、法務の検討においては、法的三段論法の型を無視することはおすすめできません。

では、どうすればよいのか。

答えは非常にシンプルで、「検討を行うとき」と、「相手に伝えるとき」で、構成を変えればいいんです。

自分の中で結論を出すときには法的三段論法を使い、相手に伝えるときは内容の構成を変える。イメージ的には下の図のような感じです。

 

これを見逃しがちな新人法務マンは結構多いです。

  

ビジネススクールの出来事

と、偉そうに講釈たれてきましたが、私も、実は人に何かを伝える際に三段論法を使っていました。

昔ビジネススクールの授業で、優れたコミュニケーション(人にものを伝える)手法を例題の数種類から挙手で選ぶことがあり、私は三段論法的例に対して自信満々で手を上げたのですが、、、

 

結果、それは「悪い見本」!

少なからずショックを受けたものです。

 

法務の業界では、判例や論文の記載は基本的に三段論法で書かれているため、どうしてもこのコミュニケーションが最良と思い込んでしまいますよね。

 

コミュニケーションの鉄則、「PREP」

ここまで述べてきた内容は、「PREP」という名称でフレームワーク化されています。

PREPというのは、

  • P = Point(もっとも伝えたい要点、結論)
  • R = Reason(その理由)
  • E = Example(例)
  • P = Point(結論を繰り返す)

という、ビジネスにおけるコミュニケーションフレームワークです。この順を意識することで、相手に伝わりやすいように内容を構成することができます。

 

まとめ

相手に何かを伝えるとき、あなたが考えた順番をその通りに伝える必要なんてありません。せっかく長い時間をかけて頑張って検討したのですから、伝わりづらい方法で伝えるなんてあまりに勿体無い!

最後に一手間かけて、より伝わりやすい形で伝えるようにしましょう。