法務に限らず、バックオフィスというのは目標設定に苦労する部署です。営業のように明確な数字を設定できるわけではないので、何をすれば全社貢献につながるのかが見えづらい。マネージャーとしてメンバーにどんな軸を与えてあげるべきかが見えづらく、同じような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
私の経験上、バックオフィスの目標設定の軸は、「業務の改善!改革!」的な方向に行くか、「伸びている〇〇ビジネスをサポート!」的な方向に行くケースが多いと感じますが、これはどっちもイケてない目標です。前者は手段の目的化ですし、後者は「伸びている〇〇ビジネス」に直接関われない、もしくは関わる機会の少ないメンバーにとってはモチベーションが上がりません。
私自身経験あるんですが、こういうマネージャーに当たるとモチベーションの置き所が非常に難しくなります。。
法務(バックオフィス)の目標設定の軸
私は、メンバーの目標設定の軸を、以下の3点で考えています。
① 日常発生する業務をしっかり回すこと
② 日常業務を改善すること
③ 自身の能力を上げ、できることを増やすこと
①の「日常業務」は、日頃の契約審査や法律相談への回答などです。ここに評価軸としての価値を認めないマネージャーもいると思いますが、これが回らないと会社としての業務に支障が出るものである以上、私はここにも価値を認めてあげたい派です。
②は業務フローの改善や、研修・啓蒙による各部の知見アップ、マニュアル化等による業務効率化を指します。「改善!改革!」に対して若干ネガティブ目なことを書いていましたが、メンバーの時間が有限である以上、これが重要であることに疑いはありません。盲目的に同じ業務を繰り返すことは、当然良いことではありません。
③は、個々人として学習を積み、それまでできていなかった部分をできるようにする/なることを意図しています。例えば、英語が得意でなかったメンバーが英語を学び英文契約のレビューができるようになるとか、特定の部署・ビジネス・分野(例:データ規制)への知見がなかったメンバーが学習しながら意識的に仕事を取りに行き、その部署やビジネスに案件を回せるようになるとか、そんなイメージです。
スタートアップなどであれば、日常の業務が新しいことばかりで、①をこなすということが即ち③を兼ねているというケースもあるでしょう(すごく羨ましい環境です)。ただ、その場合であっても、新しい分野を取れているのかどうか(今やっているのが①だけなのか、①兼③の状態になっているのか)というのは、意識的に見ていくべきと思います。
この考え方の究極的な目的は、③につなげていくこと、そのための時間を確保することです。
いかに組織で仕事をするとはいえ、法務は専門職です。個々の能力の向上なくして、チームの力は上がりません。アマチュアチームのチームワークがどれだけ良くても、プロのチームには絶対勝てないのです。一人一人が自己の能力をあげていくことが絶対に必要になります。
①で給与に対する価値を提供しつつ、②で時間を作り出し、いかに③につなげていくか(そのための時間を作り出していくか)がこの考え方のコンセプトであり、目的になります。各メンバーのキャリアにとっても好影響なので、組織とメンバーがWin-Winの関係になれるのもポイントです。
目標設定の軸に対する評価の比重
この考え方のもとでの評価の比重は、①:②:③で1:1:1になるかなと考えています。全部できていれば高評価、2つできていれば中評価、1つであればギリギリ及第点(S、A、B評価の場合、全部できていればS、2つでA、1つでB)という考え方です。
ただし、①ができていないという状態は厳しい。
①は今の給与水準で最低限こなすべき業務であるはずなので、他の2つができていても、①ができていない場合はその時点でマイナス評価原則にならざるを得ません。営業でいうと、売上取れない営業マンということになるので、他にどんなに光る点があってもやはり難しいです。
正確には、①は必ず満たすべき基準で、そこに②、③のうち1つが乗ってくれば中評価、2つが乗ってくれば高評価、という表現の方が正しいですね。
一方で、各メンバーが業務に割く時間が①:②:③で1:1:1になるかというと、なかなかそれは難しいのが実情です。どうしても、①に割く時間が60%程度にはなってしまいがちですが、これはもう仕方ないものと考えるしかありません。
様々なご意見ある点かと思いますが、何かの参考になれば幸いです。
なお、マネージャーの目標軸はまた違うお話になります。