景表法の総付景品規制の存在意義は何だろう

この記事、半分、愚痴です(笑)

景品表示法の総付景品規制の意味合いが、個人的にピンときていません。

総付景品規制というのは、景品類の上限を取引価格の20%以内に抑えなければならないというアレですね。どんな業界でも、toCのビジネスをやっていれば避けては通れない規制です。

 

総付景品規制への疑問

総付景品規制の疑問点、主に以下によります。

 

景品類の付与は、事業者にとって「やったもん勝ち」ではない

まず、景品類の付与は、それ自体で消費者が損をすることはありません。「景品類の付与」という事象だけ見れば、消費者にとってはメリットです。

逆に、景品類の付与は事業者にとってはコストです。各事業における利益の最大化のために行われることなので、無制限に行われることはありません(でないと、単なる慈善事業です)。

したがって、総付景品の付与は、規制がなくても、個々の事業者において適当な範囲に自然と収まってくるはずです。

 

不当廉売や抱き合わせ販売は、景表法の規制範囲ではない

そして、これです。

体力のある事業者とそうでない事業者では限度が異なるため、総付景品上限を無制限にすれば弱小事業者は淘汰されてしまう、結果、長期的に見れば公正な競争が阻害されて、商品の価格が下がらず、消費者にとっては害になる、

景品表示法は独占禁止法の特例法なので、こういうロジックがあることはよくわかります。

 

でも、「増量値引き」や「セット販売」にした途端に、総付景品規制の適用はなくなっちゃうんですよね。

その場合、問題になるのは独占禁止法の不当廉売や抱き合わせ販売になるわけですが、これらは基本的に競争阻害性が発生しなければ独禁法違反にならないとされています。一律の金額のラインを超えるか超えないかだけで判断する総付景品規制と比べて、ずいぶん結論に差があります。

ちょっと売り方や訴求を変えただけでこれほど結論に差が生じてくるのは、実務やっていて非常に違和感を感じます。

 

景表法の他の規制に比べて、総付景品規制は浮いている?

表示規制の存在意義は明白です。

こちらは景品と違い、消費者にダイレクトにデメリットが及びますので、ストレートに消費者保護の観点で規制の必要があります。そうでなければ、事業者にとっては、まさに「やったもん勝ち」の世界になってしまいます。

 

一般懸賞の存在意義、これもよくわかります。

一般懸賞に上限規制がなければ、もはやギャンブルです。仮に個々の消費者の利益をスポットで害さないとしても、社会的な利益を明らかに害します。お金を賭けて麻雀を行うのが違法なのと、考え方は同じですね。

・・・例えとして賭け麻雀を持ち出したのに、深い意味はありませんよ(棒読み)。

 

絵合わせ規制、これは景品規制の一環ではありつつ、その実態は表示規制に近いものなので、これも存在意義はわかります(それが改めてはっきりしたのが、「コンプガチャ」でした。詳しく書くとめちゃくちゃ長くなるので、またいずれ。)

これらの規制に比べ、総付景品規制は、明らかに浮いているように見えてしまいます。

 

事実、海外の国々を見ても、表示に関する規制は当然のようにあり、また懸賞に関する規制もしばしば見受けられますが(シンガポールなど、一部の国は日本と比べても厳しめの規制があります)、総付景品を規制する規制はまだ見たことがありません。

 

まとめ

総付景品は、景品表示法による金額ラインでのシロ・クロではなく、独占禁止法により競争阻害性の要件をつけて規制する方が良いのでは、と思います。

範囲が不要に広くなりすぎる規制のために事業者(多くは法務担当者)がコストとパワーをかけているという実態は、経済成長のために健全とは思えません。

いろんな意見あると思いますが、私は見直し対象にしてよい規制だと思います。